滋賀・長浜の盆梅展

慶雲館の歴史と共に

滋賀県長浜市は、のどかな田園都市である。

福井の敦賀から峠坂を琵琶湖湖北に下り切ったところ、琵琶湖湖畔に接して広がっている。

この街では、晩冬1月末から早春3月にかけて、毎年「盆梅展」が開かれている。

ぼんばいてん、と読む。

昭和27年から始まったこの行事は、文字通り梅の盆栽の展覧会である。

60年にもわたっての開催、そして展示される鉢の数量、また古木の数や種類において、この長浜「慶雲館」の盆梅展は名実ともに日本一を自他共に認めている。

しかし、その樹齢たるや、100年、200年はざらで、中には400年という古木もあるから、驚嘆ものだ。

もし花が咲いていなければ、もはや朽ち果てた腐朽の幹とも枝とも見紛う。

この慶雲館は長浜の豪商浅見氏が明治天皇行幸に際して建立したものだ。

その座敷を、盆栽鉢に植えられた見事な梅の古木が埋め尽くしている。

梅とは、松竹梅の一木であり、まさに寿木の一つだ。

それというのも、この三木は、冬の厳寒を割いてその青々とした翠の葉を繁らせ、また開花を誇るからこその縁起物なのである。

巷間で使われるこの三木中の序列、つまり梅が最下位という優劣の序列などは本来はない。

松竹は緑の葉だけである。

また、普通の花が先ずは芽そして青葉、ようやく花芽となって開花するのに対して、梅は枯れ枝からいきなり紅(くれない)や白の花を吹く。

平安の太古では桜よりも梅を春の花見として楽しんだ。

大宰府へ流刑に処された菅原道真の哀歌、

「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな」

千幾百年の時を超えて、その薫る梅は、厳しい冬の寒空に可憐な花を吹き上げる。

そうして春告げ花としてひとしおの感動を、今日も見る人に与えてくれる。

花を咲かせ切ったそれぞれの鉢植えの梅木は、この展覧会が終わるや庭に出され、たっぷり施肥がされ夏を通して樹勢を蓄える。

そして、また翌年の開花に備える一年を送るのである。

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